新潟水俣病は公式確認から50年を迎えた。この間、最高裁は二度にわたって、現行の認定基準(昭和52年判断条件)では認められなかった被害者を「水俣病患者」と認めて、国や加害企業に賠償を命じた。最高裁は、認定基準の見直しを含む弾力的な運用を求めている。
しかるに、今年3月末現在、県内の認定申請者が160名を数えているように、また国や昭和電工を被告にした訴訟が行われているように、新潟水俣病は終わっていない。昨年5月31日、新潟市内で開催された「新潟水俣病公式確認50年式典」において、望月環境大臣(当時)は「悲惨な公害が二度と繰り返されないよう、環境行政の推進に全力で取り組むことが自らの使命である」と述べたが、未救済被害者への対応については言及しなかった。
一方、新潟県知事は同日、いまなお潜在患者が相当数いることを踏まえ、すべての被害者が救済を受けることができる恒久的な救済制度の確立等を求める『ふるさとの環境づくり宣言2015』を発表した。
また、「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法(水俣病特措法)」の救済判定を巡って、国は異議申立ができる行政処分には当たらないとの見解を示しているが、新潟県は処分性があるとして異議申立を認め、行政不服審査法に基づいて審理をおこなっている。この件については、著名な行政法学者らが、国の見解はこれまでの判例・通説に反すると指摘している。
よって、国会並びに政府におかれては、新潟水俣病全被害者の救済と問題解決に向けて、下記の事項について早急に取り組まれるよう強く要望する。
記
1 新潟水俣病の早期解決に向けて、被害者・国・加害企業など関係者が一堂に会する話し合いの場を設けること。
2 平成21(2009)年7月に成立した水俣病特措法の37条に定めている「阿賀野川流域住民の健康被害実態調査」を速やかに実施すること。
3 潜在患者が名乗り出ることができるよう、環境整備すること。
4 昭和30(1955)年頃から昭和53(1978)年頃まで阿賀野川の魚介類を喫食した県外在住者らに、新潟水俣病に関する情報が伝わるよう格別の取組を行うこと。
5 水俣病特措法の異議申立を認めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成28年6月29日
新潟県新発田市議会
( 提 出 先 )
衆議院議長 大 島 理 森 様
参議院議長 山 崎 正 昭 様
内閣総理大臣 安 倍 晋 三 様
総務大臣 高 市 早 苗 様
財務大臣 麻 生 太 郎 様
厚生労働大臣 塩 崎 恭 久 様
経済産業大臣 林 幹 雄 様
環境大臣 丸 川 珠 代 様